一度帰った家から学校へもう一度向かう徒労が、

「やんなっちゃう」

ゆいを再度ぼやかせた。

学校まではバスを使うような距離でもなく、かといってそこまで近くもない。

徒歩十五分。自転車をわざわざ出すのもめんどうな距離だった。

「ほんと、やんなっちゃう」

と真似をした燈哉が、頭の後ろで手を組んでいる。

「で、ゆいはどう思ってンだ?」

「木霊について?」

「ああ」

「ぶっちゃけ、ただの空耳」

「言い切るねぇ」

「まあね」

その燈哉を追い抜きながら、ゆいは空を見上げる。夏に差し掛かろうとしている空は、五時ではまだまだ、青い。

「その四辻がどこにあるのかってのも気になる話だけど、第一、木霊は大向の人が山びこを説明するために生み出した幻想。幻想は、現実には存在しないの。おわかり?」

「頑固なこって」

「リアリストと呼んで」

なにかにつけて茶々を入れるのが、千里ヶ崎燈哉だ。彼は彼で自分と同じ特殊風紀委員にもかかわらず、まったくもって言葉の選び方を知らない。