「なんで、どうして? 瀬戸岡さんだけだったんだよ……木霊のこと信じてくれたの……瀬戸岡さんが支えてくれたのに……なんで木霊は瀬戸岡さんまで呪うのよ……」

「落ち着いて、相田さん」

「私が木霊の呪いを受ける前から、気をつけてねって言ってくれてたんだよ……? 瀬戸岡さんはずっと私を心配して、気遣ってくれてた、いい人なのに……」

「……」

「瀬戸岡さんがクッキー焼いてくれて、おかゆ作ってくれて、シチュー作ってくれて……それ食べると、すごく落ち着けて……」

「もう、わかったわ」

同性を押し倒したままなのも、気まずい。起き上がったゆいは、そのまま立ち上がり、キッチンへ向かった。備え付けたの、腰までしか高さのない冷蔵庫を開ける。中には、ラッパをかけられたおかゆがあった。ネギが見映えよくパラパラ散りばめられている。

冷蔵庫から、相田へ目を向けた。彼女はまだ、仰向けに倒れたままである。

「ねえ……これ、もしかして瀬戸岡さんの?」

「……うん。そう……」

「ふうん」

失礼とは思いながらも、近くの食器棚からスプーンを取り出し、ラップを開けて味見した。

(美味しい――でも)