「そ、そんなこと言って、ごまかそうとして……ほっ、ほんとは、まだいるんでしょ!」

「ええ、いるわ」

と言えば、

「えっ、嘘嘘嘘嘘……嘘よぅ……」

と、またそれさえも否定する。

やれやれとかぶりを振って、ゆいは溜め息をついた。

なにが現実でなにが本当でなにが幻でなにが虚偽なのか、わかっていないのだ。半狂乱している。

しかしそれが、ゆいにとっては好都合だった。

古来より、陰陽師――特に宮部家は人々の不振、不安感を利用した上で施しをしてきた。

すべての怪異は現実に根付く卯上、幻想とはなりきらぬ。幻想の皮を被った現実を、同じく幻想の皮を被って追い払う。幻想には幻想を。怪異を巴投げにする。それが宮部ゆいの陰陽道――ひいては特殊風紀委員としての力だった。

「木霊の呪いから、助けてあげましょうか?」

「そ、そんなの、できるわけ……」

「じゃあ、いいわ。さよなら」

「ま、待って……!」

すべては、人間の不安と恐怖を逆手に取った、心理攻撃。

「待って、宮部さん……その、ほんとに今、木霊がいるの?」

「……さあ」

「いっ、いるんでしょ!? いるならいるって、はっきり言ってよ!」