「まあ、見ていた感じさっぱりだな。どこまでが本当でどこまでが嘘か、わからねぇ」

「見破れなかったの?」

燈哉は茶々を入れるのが得意だ。すなわち、他人の顔色、表情、その心境を読み取ることに長けているからである。

その燈哉をもってして、瀬戸岡亜美の内情を探れなかったのだろうか。

ひょいと肩が竦められる。

「なんせ、あの見てくれだしな。和風美少女が純情可憐の服を着てるようなもんだぜ。とてもじゃねぇけど、表情も奥ゆかしすぎだ。あの微笑みがむしろ、厄介なポーカーフェイスってとこさ」

「ポーカーフェイス、ね」

「ああ。私なんにも知りませんって顔でいきなり核心じみた嘘やらつかれたら、頭こんがらがるわな」

たしかに、他人を欺くぐらいの美少女ではある。それを熟知した上であの微笑みを浮かべているのなら、瀬戸岡亜美はとんだ詐欺師だ。

特にあの発言。

木霊に言われて被害者の面倒を見ている。

それが本当だとしたら、彼女こそ被害者なのだろうか。

いいや。真の被害者であるならば、ほかの誰よりも参っているはず。精神的にも体力的にも見て、瀬戸岡亜美がほかの被害者より重症には、見えない。