瀬戸岡亜美はいつから木霊に?

まさか、最初の被害者の直後から……?

しかしなぜ彼女だけが無事で?

考え始めると、事件の時間軸や条件、構造が入り組んでしまいそうだった。

まるで、そうやって悩み始めたゆいを笑うように、瀬戸岡の声が弾ける。

「あは。もう、冗談よ、千里ヶ崎くん。そんなに驚かなくったっていいじゃない?」

「あ――あはは、わりぃわりぃ」

冗談――なのか、どうなのか。

尋問をうまくかわされてしまった気がしてならない。瀬戸岡亜美はまさか、こちらの思惑を読んでいた? ここに自分らが潜んでいることも?

そんなバカな。

しかし結果として有益な情報がはぐらかされたのは、事実。

(っ、燈哉め、もっとうまくやんなさいっての)

つい眉間にしわを寄せてしまったゆいに対し、

「――時間だわ」

腕時計に目を落としていた拍子木が、告げた。数秒遅れて、教室の左右の廊下から、生徒達のざわめきが近づいてくる。

ゆいはドアを開けた。

「ちょっと燈哉! ――あら、瀬戸岡さん」

そして、まさか瀬戸岡がいるとは思わなかった風に振る舞う。

机の上に行儀悪く腰かけている燈哉の首根っこを掴み、引きずり下ろした。