バカみたいに明るい声が笑い、ゆいは痙攣した。教室のドア、そして状況という障害がなければ、ヤツの後頭部にハイキックを食らわせてやりたいところである。

「抑えて抑えて」と拍子木に言われて、ゆいは口角を片方だけ吊り上げた。

「なに、言ってる、の、拍子木。私は、いつだって、冷静、よ?」

「……そう」

「でもよ、」

と、そんな二人は当然よそに、燈哉が言った。

「いくら知り合いだからって、さすがに全員ってのはすげぇよ。大野ンとこも、ほかの学年のとこにも行ってんだろ。尊敬すっわ」

「もう、あんまり褒めないで」

「いやいやマジで。だけどさ、なんで瀬戸岡さんそこまでするんだ? なんかワケアリ?」

――きた、とおもった。

ゆいと拍子木の表情が引き締まり、一瞬の音さえも逃さないために、全神経が耳になる。

「そうかしら」

という、平々淡々然とした声が、返事だった。

「私、気にしたこともなかった」

「いやあ。無意識ってなるとなおさらすげえわ……俺ぁてっきり、だれかに言われてんのかと思ったぜ?」

「だれかって?」

「ん? たとえば先生とか?」

燈哉は粘るつもりだ。