ひょいとゆいは肩をすくめる。

「それですむなら、問題ないけどね。私にはどうも引っ掛かるの」

「人間性からくるひがみか?」

「真面目な話よ」

燈哉の脇腹を、軽く足で小突いてやる。

「思うのよ。彼女はなにか知ってる。私の考えを述べるなら、そうね、安直だけど、木霊の四辻について核心的ななにかを知ってる。そして、なぜ木霊の呪いによる被害者が出ているかも」

「……実行犯も、だれか知ってるってのか?」

ずずず。

「そう。それで、そのだれかは彼女と親しいの。木霊の呪い実行者がだれかは知らないけど、きっと彼女にとって大切な人物」

「それが生徒や教師を精神的に追い込んで、あんな風にしちまって、心が痛むってか?」

ずず、ずずずずずー。

「まあ、捻った考え方ではあるけどね。呪いと呼ばれている悪戯の尻拭いをしてる……私はそう思うの」

「ふうー……ん……?」

じゅずずずずずずずずず、ず、ず――、じゅずすしゅ……。

「もう空よ」

「そだな」

もう一度脇腹を足で小突いてやると、燈哉は鯉が俎上で跳ねるように、脚の振りを利用して勢いよく起き上がった。