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空を占拠している分厚い雲は午前に比べてよりいっそう勢力を増し、いつ降りだしてもおかしくない暗さだった。そんな空を、燈哉の濁った目が写す。紙パックのコーヒー牛乳をずずず、ずずずと啜りきって、面倒くさそうにゆいを見上げた。昼休み、燈哉のピッキングで上がり込んだ屋上である。
「あー……瀬戸岡亜美が、怪しい……? それマジで言ってんのか」
「マジよ。正確には怪しいというより、彼女が木霊の四辻についてなにか知っているかもしれない、という推測ね」
「ふー……ん?」
と、地べたに足を投げ出して座り込み、だらしなくフェンスに寄りかかっている燈哉は、中身のないパックをさらに啜る。
ゆいはその横でフェンスに背中を預けて寄りかかり、両肘を抱いていた。両肘を抱くのが、ゆいの癖、よくやるポーズだった。
「木霊の呪いにかかった人物のことごとくを、瀬戸岡亜美は看病、アフターケアしてるらしいわ。昨日の今野先輩や、そのルームメイの八木麻衣子までならわかる。だけど、他学年、さらには教師の大野までとなると、少し異常ね」
「瀬戸岡さんは優しいんだろ。お嬢さまは懐が広いってやつさ」
空を占拠している分厚い雲は午前に比べてよりいっそう勢力を増し、いつ降りだしてもおかしくない暗さだった。そんな空を、燈哉の濁った目が写す。紙パックのコーヒー牛乳をずずず、ずずずと啜りきって、面倒くさそうにゆいを見上げた。昼休み、燈哉のピッキングで上がり込んだ屋上である。
「あー……瀬戸岡亜美が、怪しい……? それマジで言ってんのか」
「マジよ。正確には怪しいというより、彼女が木霊の四辻についてなにか知っているかもしれない、という推測ね」
「ふー……ん?」
と、地べたに足を投げ出して座り込み、だらしなくフェンスに寄りかかっている燈哉は、中身のないパックをさらに啜る。
ゆいはその横でフェンスに背中を預けて寄りかかり、両肘を抱いていた。両肘を抱くのが、ゆいの癖、よくやるポーズだった。
「木霊の呪いにかかった人物のことごとくを、瀬戸岡亜美は看病、アフターケアしてるらしいわ。昨日の今野先輩や、そのルームメイの八木麻衣子までならわかる。だけど、他学年、さらには教師の大野までとなると、少し異常ね」
「瀬戸岡さんは優しいんだろ。お嬢さまは懐が広いってやつさ」