「その八木先輩、今野先輩のところ以外にも行ってるわ。国語の大野先生のとこもそうだし、生徒や教師にかかわらず足を運んでるようね」
「なにそれ。……全部、慈善行為だって言うの?」
「らしいけどね。料理を作りに行ったり、外に出ようとしない生徒の代わりに買い出しへ行ってあげたりだとか、他愛ない――っていうか木霊の四辻についての不安の話を聞いてあげたり、だとか」
「まるで聖母ね」
あまりにできすぎた瀬戸岡の人間性に、ゆいは胸焼けしそうだった。今も、話しかけてきたクラスメイトに対し、上手く話にのって、合いの手を入れたりしている。そういえばいつも、どんな話題にもそれなりに強調している。社会性と慈母性の塊のようだった。同じ十六歳とは、思えない。
しかし、
「どうして彼女、そこまでするのかしら。ねーえ拍子木。どうしてかな?」
ただ、瀬戸岡亜美は他人に優しいという認識で片付けるには、腑に落ちなかった。
彼女はなにか、木霊の四辻について重要な事柄を知っている?
それが理由となって被害者のアフターケアをしている?
想像はできても、どれだけもっともらしい理由をひねり出しても、あくまで推測の域を出ない……。
「なにそれ。……全部、慈善行為だって言うの?」
「らしいけどね。料理を作りに行ったり、外に出ようとしない生徒の代わりに買い出しへ行ってあげたりだとか、他愛ない――っていうか木霊の四辻についての不安の話を聞いてあげたり、だとか」
「まるで聖母ね」
あまりにできすぎた瀬戸岡の人間性に、ゆいは胸焼けしそうだった。今も、話しかけてきたクラスメイトに対し、上手く話にのって、合いの手を入れたりしている。そういえばいつも、どんな話題にもそれなりに強調している。社会性と慈母性の塊のようだった。同じ十六歳とは、思えない。
しかし、
「どうして彼女、そこまでするのかしら。ねーえ拍子木。どうしてかな?」
ただ、瀬戸岡亜美は他人に優しいという認識で片付けるには、腑に落ちなかった。
彼女はなにか、木霊の四辻について重要な事柄を知っている?
それが理由となって被害者のアフターケアをしている?
想像はできても、どれだけもっともらしい理由をひねり出しても、あくまで推測の域を出ない……。