「これといって、風紀委員での情報はないわ」

と拍子木は答えた。出し渋ったりとぼけているのではなく、調査をした上で、それでも実になるものがなかったと表情が語っている。

「だけど、」

「だけど?」

「風紀委員よりも、彼女のほうがいろいろ知っているかもしれない」

拍子木がくいと顎をしゃくって指したのは、いま席についた瀬戸岡亜美。

「彼女、木霊の被害者の看病をしてるって話だから」

「……みたいね。八木先輩のルームメイトで、今野先輩、知ってる? その人を看病してるみたいよ」

「へえ。そっちにまで行ってるの」

「そっちにまで?」

「あら、知らないのねぇ」

と、今度は拍子木が笑う。

二人は方針の違う似た者同士だった。隙あらば相手を出し抜きたいというライバル心が、出逢った頃から意味もなく根付いている。