翌日、空は曇天だった。過ぎ去ったはずの梅雨が気変わりして戻ってきたように、分厚い雲が西から東へ鈍足行進している。今にも降りだしそうたが、天気予報は曇りのち晴れと言っていた。外れそうだ。

夏休みを直前にした教室の空気は、夏の熱気と舞い戻ってきた梅雨の湿気とでも、不快指数が高かった。なまじ桜木学園がマンモス学校であるだけに、人間の熱気も手伝って余計に暑苦しい。クーラーをつける前に換気をしなければやっていられない。今は、教室の窓がどのクラスも全開になっていた。恐らく、一時間目が始まる頃にはクーラーが入れられるだろう。

登校してきたゆいを、拍子木かおるが待っていた。左腕には、紫色に白文字の風紀委員腕章がつけられている。席につき、鞄の中身を机に移しているゆいに向かって、拍子木かおるは噛みつく。

「早速だけど、木霊の四辻、知ってるわよね」

「ええ」

視線をあげないでいると、拍子木は机に手を突きながら屈み、首を捻りながら覗き込んでくる。蛇が獲物の臭いを嗅ぐのに似ていた。

「被害者が出てるって話じゃない。でも、風紀委員のほうじゃ圧力がかかってて調べられないの。ということは、特風が動いてるのね?」