ここでは、手がかりを掴み損ねた。しかし、さらに木霊の四辻を辿れば再び、今のように自分の声が聞こえるのではないか。その原因が判明するのではないか。試さない手はない。

きびすを返し、掴んだままの燈哉を引きずっていく時、

―― うっさい ――

また、自分の言っていない自分の声が、した。

性格に、瀬戸岡亜美のいるほうから。

立ち止まる。

振り、返る。

自分らを見送っている瀬戸岡亜美が、「どうかしたの?」と言いたげに首を傾げていた。

瀬戸岡亜美には、聞こえていない?

「燈哉、今の」

「あ? どうかしたか?」

「……やっぱりいい」

燈哉にも、今のは聞こえていないのだろうか。

木霊の四辻――木霊の呪い。

自分の声が聞こえる。

四辻で。

聞こえた者は……。

「――冗談じゃないわ」

とだれにも聞こえない声で吐き捨て、ゆいは燈哉を引きずっていった。