「えへ、えへへ……窓から宮部さん達が見えたから」

それで、中庭から駆け寄ってきたのだろうか。彼女はローファーだった。しかし、どうして?

「なにか私達に用事?」

訊ねながら見やった渡り廊下には、木霊の正体らしきものはなにもいなかった。いや、なかった、と言うべきか。

瀬戸岡亜美はなにも悪くない。だが、邪魔をされた気分だった。

「実はおかゆね、作りすぎてしまったの。さっき、千里ヶ崎くんお腹空いてるって言っていたでしょう? だからどうかなって」

「マジで!?」

「こンのっ」

「ぐえっ」

即座に食らいついた燈哉の襟首をまた掴んで、引っ張り戻す。今は悠長に食事をしている場合とは違うのではないか。

「せっかくのお誘いだけど、お断りするわ」

「どうして?」

「木霊の四辻が、人為的事件だってわかったからよ」

「まあ」と、そこはお嬢さまらしく、口許に手をやって瀬戸岡は驚いた。

「人為的なって、本当?」

「ええ。木霊の四辻なんて、やっぱり迷信よ。そして、人が起こしている以上、早急に解決しないと学園の問題になるわ。時間が惜しいの。だから断るわ」

「そう。がんばってね」

「ありがと」