しかし、そこはコンクリートで固められている、ひどく現代的な通路。精霊や妖怪といった超自然的存在が無理やりにも入り込めるようなスペースはない。木は生えているものの、それは校舎と校舎の間となる中庭で、この交差点に木があるわけではない。

「木霊が精霊っていう線は、これで消えるわね」

「なんでだよ」

「わかりきったようなこと、聞かないでちょうだい。妖怪や精霊の出現にはルールがあるの。なぜならそれらは、ある一定条件下で起こる現象を生物化したものだから。人間よりも身の程をずうっと弁えてるのよ」

「あー、リアリストエンジン暴走中?」

「ふざけないで。火のないところに煙は立たぬ、よ。木霊は木の精霊。辻そのものに木がないんじゃ、木霊の四辻っていう名称が破綻するわ」

「木ならあるだろ、ほれ」

燈哉が指差すのは、先ほどゆいもちらりと見やった、中庭の木だった。

少女は苦笑する。窓に背中を預けながら、両肘を抱く。