上品な声音でそんなバカげたことを訊ねられると、ただでさえ信じていない噂が、なおさら浮き世離れしていく気がした。苦笑も隠せない。恐らく今自分は、変な顔をしている。そして燈哉が横でにやにやしている。確認はしていない。が不必要な自信はあった。

「その噂、瀬戸岡さんも知ってるんだ」

「有名だもの」

「ふう~ん」

「ねえ、本当にあると思う? 木霊の四辻」

繰り返される質問を、ゆいはだれにもそうしたように、断つ。

「さあね。実際に被害者が出てるんだし、そういう四辻はどこかにあるんじゃない?」

「ふうん」

と今度は瀬戸岡が頷き、ゆいが小首を傾げて見せた。

「でもね。私はこれ、木霊の仕業に見せかけた、人間の所業だと踏んでるのよ」

「木霊の名前を騙った、悪戯ってこと?」

「度が過ぎてるけどね」

生徒ばかりか教師も被害に遭っているのだ。木霊の存在は不信だが、実際に見てきた被害者を見る限り、現象については認めざるを得ない。

木霊の四辻は存在する。

残念ながら、

「宮部さん。もうひとつ」

「なに?」

桜木学園八つ目の不思議が今、

「どうして、四辻なのかな」

「……さあ」

まさに息づいていた。