八木麻衣子と今野佐紀に渡したのは、ただのコピー用紙を切ったものである。

今野は、なにが書いてあるか見えなかったわけではない。最初から、なにも書いていないのだ。

「不思議なことに見せかけてある災いを、同じく不思議なことに見せかけて排除する。それが私の仕事でしょ」

「へいへい。はたから見てたらありゃ、ただのインチキ宗教だがな」

「うっさいな、もう。陰陽師なんて大昔っからインチキと気休めで食ってるの。自覚あるんだからそれ以上言わないでよ」

リアリストを自称するゆいにとって痛いところなのである。そうと知っているから、燈哉もあえて言っているのだ。

自分の弱点を、性格の悪い幼馴染みが知っている――非常に癪だった。

現実にはない力に頼る――人間の精神は思いのほか、そう、木霊という声だけの現象によって崩壊してしまうほど、脆いのかもしれない。

「さて、これからどうするよ、ゆい」

「そうね……とりあえず木霊の四辻を洗いましょう。人によって日によって異なるにせよ、割れてる場所はいくつもあるんだから。現場検証、これ、リアリストの信条よ」

「へいへい」