木霊の四辻

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話をまとめると、こうだ。

二週間ほど前から八木麻衣子は木霊の存在に怯えるようになった。

木霊の声が聞こえてくるのは必ず八木麻衣子がひとりの時で、木霊は、八木麻衣子の言葉を何度も真似するらしい。

その日、もしくは前日、数日前の八木麻衣子の言葉を、遅い遅い山びこのように、反芻させる。

木霊の四辻――それは人によって異なり、日によっても異なるらしい。

場所、時間さえも特定されていないが、必ず辻になっている場所で、木霊は相手の、過去の言葉を弄ぶ。

妖怪繋がりで例を挙げるならば、鎌鼬のように人を傷つけるわけもなく、ぬりかべのように通せんぼをするわけでもない。

ただ、声を投げ掛けてくる。一方的に。

そして返事をしてしまったが最後、木霊の呪いが本格化し、声の頻度が増すそうだ。

ただただ、声ばかりの呪い……。

それがいったい、人間の精神にどれだけの負担を与えるのか、未経験のゆいにはわからない。経験したいとも思わない。

そんなのは、

「なんか、みみっちい嫌がらせにしか思えない」

耳障りな、だけだ。