「……今野、佐紀、さんですね?」

「ええ、そう、ですけど」

ゆいの確認に、今野佐紀はおずおずと、しかしはっきり頷いた。そして、ゆいと燈哉を眺め回す。彼女からしたら二人は、自分のへやのドアを蹴りつけて喧嘩をしている、正体不明の後輩、である。

ゆいは今野へ、真正面から向き合う。

「私は宮部ゆいといいます。こっちは千里ヶ崎燈哉。はじめまして、風紀委員です」

特殊、という形容詞は隠して行動する。それがルールだ。カムフラージュとして、実際の風紀委員が装着している紫に白文字の腕章も、特殊風紀委員には配られている。もっとも、ゆいも燈哉も、好んでそれをつけない。普段はポケットの中だ。

ゆいがそれを見せると、今野は若干、肩に入れていた力を抜いたようだった。が、すぐに別の力が入る。

「風紀委員が、ウチになんのご用ですか……?」

風紀委員は、学園内においては警察と同義だ。警察に家庭訪問されて身構えるなというほうが、難しい。

ただ、

(ルームメイトが木霊の呪いなんてわけのわからないものに参ってるのに、風紀委員が訪ねてきた理由がわからないのかしら?)

と疑問にも思った。