「八木さーん、八木麻衣子さーん。いませんかあー。いますよねー?」

とノックしてから、

「……っすう、――てンめぇいるんだろうがコラヌシャァあ!? 居留守使っとらんでとっとと出てこんかボケゴルァッ!!」

怒鳴りながらドアを蹴りつけてやった。気は長いほうではない。ついでに、そこまでお上品でもない。

横で燈哉がカラカラ笑う。

「気ぃ短けぇなあ。青筋立ってるぜー、ゆい」

「アンタも蹴っ飛ばされたいわけ?」

「おー怖」

「うっさい」

「いてっ」

有言実行はゆいの抱く理念のひとつである。本当に燈哉へけりを食らわせてやった時、

「あの……」

ビニール袋と紙袋のこすれる音、そして控え目な少女の声が、ひとつずつ、間違いなくゆいと燈哉の二人に投げかけられた。

木霊――ではない。断じて。