「空耳でなかったら幻聴よ。ヤバい薬でもやってるんじゃないの? だから体調を崩して学校を休んでるのよ」

「こじつけっぽいな。ヤバい薬ってなんだよ」

「阿片?」

「そんなもんどこ売ってンだよ」

「さあ」

「おいおい」

「だってこじつけだもん」

素直に白状し、ゆいは歩を早めた。

「木霊の四辻とやらも正体不明だし、実際に木霊がいるなんて信じられない。どうして被害者が木霊の呪いだとか、取り憑かれただとか言うのかもわからない。そんな状況で、こじつけいがいにどんな推理をしろっていうの?」

「だから学校へ行くわけだな」

「じゃなきゃ家でテスト勉強してるわ」


桜木学園は小高い丘の上にある。螺旋坂と呼ばれている、おかをまるまる二周する坂の上だ。学園まで、直線の坂道も階段も、ない。

桜木学園には螺旋坂を登るしかなく、それ以外の道を強引に作ったり、行ったりしてはならない――まことしやかに、地域に根付く話だった。