ただの雑音だと思っていたそれが実は、自分に向けられているものだと気付いた時――気付いてしまった時、もう逃げきれないのだと悟った。

それはどこまでも何度でもついてきたから。

言葉を変えて、私に語りかけてきた。囁きかけてきた。が、私にはそれが、はっきりとした悪意を持っていることを知っている。

なぜなら、それが囁き、語り、呟く言葉のすべては、私の声で、私が以前に発した言葉なのだから。

木霊が、私の言葉を何度も何度も弄ぶ。小さい子供が買ってもらった人形をどこへでもつれ回し、振り回し、ボロボロにするように、執拗に。

けれど、だれも信じてくれなかった。木霊の存在に、だれも耳を傾けてくれなかった。

ひとりだけだ。……たったひとりだけ、私の言葉を信じ、励まし、支えてくれた。

私はそれが嬉しくて、そのたったひとりに縋るしかなくて、そうしなければどんどんと、自分が追いつめられていくような危機感があった。

たぶん、その人さえ私を支えてくれれば私は、きっと、あと何日だってこの悪夢のような日常を耐えられる。

その人が、私に、大切なものを与え続けてくれる限り――。