「そうか?俺はいつもこうだけど」

「いや、何だか…上の空だな、と」

邑丁は訓練の汗を腕で拭った。重い鎧を着込む騎馬隊と違い、暗殺部隊は軽く動きやすい装束を纏う。

「気のせいだな、よし。…なあ、街に出ないか、漣犀。暇で仕方ない」

邑丁は子供の様に跳ね回った。こいつは何処にその体力を隠しているのか、漣犀含めた騎馬隊・暗殺部隊の仲間内では大きな謎であった。

「おまえはどうしてそこまで元気なんだ」

「それは漣犀もだ。騎馬隊の武術訓練は厳しいと有名な筈だ。俺達含めた隊全員の謎だぞ」

数えて歳は十八。漣犀と同じである。この陽気な姿からは想像出来ない顔をして、戦場に出るのだ。
暗殺部隊はあまり出番が無いため、歩兵の一部として扱われている。