「晃蝉、どうした」
駆け寄って来るまだ幼い皇太子―彼はこの国の命運を握る男。立派に育てなければならない神子。
それを傀儡にしようなどと、この国の上層部は腐って居る。
「―何でもありません、太子。さあ、お部屋に御戻り下さいね」
「―父上は」
唐突に、少年が問うた。普段ならば行儀の良い返事をして、眠るはずだ。
「父上はまた、道を踏み外しはしませんか」…晃蝉の目に、十数年前の映像が蘇る。火の海。焼け落ちる街。目の前で斬り殺された父と母。自分を連れて逃げた兄。その兄の頭が、爆風で弾け飛んだ瞬間。
絶叫、叫喚、慟哭。
―この太子は当時一つだったのに、どうしてそこまで思い至る。
これは、傀儡に出来る器ではない。
駆け寄って来るまだ幼い皇太子―彼はこの国の命運を握る男。立派に育てなければならない神子。
それを傀儡にしようなどと、この国の上層部は腐って居る。
「―何でもありません、太子。さあ、お部屋に御戻り下さいね」
「―父上は」
唐突に、少年が問うた。普段ならば行儀の良い返事をして、眠るはずだ。
「父上はまた、道を踏み外しはしませんか」…晃蝉の目に、十数年前の映像が蘇る。火の海。焼け落ちる街。目の前で斬り殺された父と母。自分を連れて逃げた兄。その兄の頭が、爆風で弾け飛んだ瞬間。
絶叫、叫喚、慟哭。
―この太子は当時一つだったのに、どうしてそこまで思い至る。
これは、傀儡に出来る器ではない。