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「…よく帰ったな、漣犀」
「はい、春鈴様」


庭には桜が咲いている。散って行く薄紅が花開いたのは、きっと昨晩であろう、あの奇襲の夜。

「どうだった、戦場は」

「…思い出せば思い出すほどに悍ましい出来事でした。…藍侫の言った通り、でした」

「…ほう、藍侫?」

「小さな頃貧民街で会い、話を聞いたことがありました。…戦場は恐ろしい。そう言っておりました」

「……そうだな……」


人間の命など儚い。
この散る桜の様に、何時散るかなど分からない。ましてや戦場。

日常と違うのは、矢が飛んできたり、自分を殺そうとする刃や戟が有ること。人間は不死身ではない。矢に当たれば簡単に死んでしまうし、首を斬られれば死ぬ。


だから、戦場は恐ろしいのだ。
だからこそ、自分達が戦おうと言っているのだが。