剣を向けたまま、その少年兵に名前を問うと、凱、と答えた。
「…この戦場を脱出して出来るだけ遠くに逃げろ」


…もうじきこの戦場は火の海になる。沢山の残兵が、煙に撒かれて死ぬだろう。

…とは、言わなかった。この少年兵が、凱が火計を本陣に伝えてしまったらどうしようもない。


ひどく自分の身勝手を思い知って、走り去る少年兵を見ながら漣犀は肩を竦めた。


そして、そこでようやく、漣犀は自分の手が震えている事に気付いた。