「お姉さん、本当に綺麗で柔らかい。幸せだよ」

「お前と言う奴は、全く」

細すぎる少年の身体に手を回すと、少年は馴れたように彼女の腰に手を回した。

「お姉さん、人の血の匂いがする」

え、と言わんばかりに彼女は目を見開く。少年は上半身裸の格好のまま彼女にしな垂れかかり、彼女の手を取った。
「この手。お姉さん、兵士?」
常に弧を描いたままの唇とは裏腹に、瞳の奥には何も宿っては居なかった。空虚という言葉が丁度良かったのかもしれない。少年が取った彼女の手は、剣や槍を握る人間特有の肉刺が出来ていた。

「…そうだよ、私は兵士だ」

「人を殺したことが有る?」

「当たり前だ。戦場とはそういう場所なんだから」