そう言って、伸ばしているのであろう右側の前髪を払った。その下には、黒い眼帯。


「斬られた」


眼帯を外すと、切り傷で潰れた右目が露になった。無惨な傷痕。執念と執念がぶつかり合う戦場に於いてついた傷痕だ。

「逆に、これで躊躇いが無くなったのかもね。…俺はまた、少しずつ人間じゃなくなっていく」

「そんなこと……」


言わないで下さい、と言おうとすると、春鈴が部屋へ飛び込んできた。




「…まずいぞ漣犀、藍侫。嗅ぎ付かれた。榛が王都に向けて進撃を始めた」