ファミレスでの食事のあと、舞と二人で〈深海〉へと向かった。



舞はブルーのノースリーブのニットに白のサブリナパンツ、素足にスニーカー。

髪はあの日以来、ずっとショートだ。

舞の大きな瞳が、一層引き立っている。

日増しに美しくなる舞から、繁徳は目を背けた。

舞はカウンターのハイチェアに浅く腰をかけ、シャンパングラスに注がれたジンジャエールを啜る。


「あたしもね、学校の同窓会名簿でおじ様の名前が〈茂〉だって、ついこないだ知ったの」


繁徳の墓地での話に舞が続ける。


「おじ様には悪いけど、あたし千鶴子さんの気持ちわかるな。

だって呼べないわよ、昔愛した人の名前で、今の恋人のこと」


(そうだよな)


舞の言葉に頷きながらも、幸子の言葉が耳からはなれない。


(舞が傷つく……俺が舞を傷つける……)