(繁さんって、父さんの本当の叔父さん?)


繁徳は千鶴子との出会いを振り返る。

二人がレンタルビデオ店で出会ったのは、仕組まれたことだったのかと考える。


(まさか……何のために?)


第一、そんな策略が巡らされる動機が見当たらない。


(出来すぎた偶然だ……)


繁徳の頭の中に釈然としない疑念が湧き上る。

だが、今見た老婦人は千鶴子に間違いなかった。

そして、千鶴子がさして驚いた風でもなかったことが気に掛かる。

何のための偶然か、考えれば考える程、繁徳の思考は深みにはまる。

この偶然に何か意味を見出そうと思考は巡る。


「繁徳、どうした。ここ曲がるぞ」


繁徳は正徳の声に我に帰ると、早足に二人を追いかけた。