「そうだな、叔父さんの墓は、父さん達と一緒の時しか行かないからな」

「繁徳の『繁』の字は、叔父さんからいただいたのよ。お母様が、どうしてもこの字をひとつ使って欲しいって」


初耳だった。

繁徳は自分の名を、父正徳の一字をもらったものだと思っていた。

そんなことを考えながら、十七区へ向かって両親の後を付いて歩いていると、三人は黒い日傘をさした人影とすれ違う。

黒いサングラス、薄紫の薄いショールが歩く度に軽く揺れる。

さっそうと歩く老婦人。


(えっ、千鶴子さん?)


繁徳が振り向くと、その老婦人は片手を軽く持ち上げて、手のひらを軽く振った。

子供の時に踊った、キラキラ星のおゆうぎみたいに。



繁徳の頭の中を閃光が駆け抜けた。