「髪の色」
「…あぁ、髪ね。
長さは変えたけど、
そーいや色はずっとこのままだったな」
彼の髪は、ずっと昔から焦げ茶色で
私はまるでチョコレートのようだと思っていた。
いつもはブラックチョコレート、
日に当たるとミルクチョコレートという風に。
「チョコレート色」
そう私が小さくつぶやくと
く、く、と李音が肩を震わせて笑い出す。
「アキってさぁ、
昔からクイイジはってるよな、特に菓子。」
“アキ”
その言葉で一瞬にして心臓がはねる。
今まで名前を呼び捨てにされたことはほとんどなくて
初めてに近いその響きに胸がきゅん、とした。
それを分かられたくなくて、思わず横を向く。