槇本綾(まきもとあや)。

あたしには好きな人がいる。


「綾ー! 行くでー」

「ちょっと待ってや;」


今は学校が終わって帰ろうとしてるとこ。

荷物を片付けるのが遅いあたしは、

友達に置いていかれそうになっていた。


「綾、もう帰るが?」

「帰るで。秋田は帰らんが?」


秋田とは秋田竣(あきたしゅん)。

あたしの好きな人。


「帰りたいけど、晃(こう)が待っちょけって」

「晃どこ行ったが?」

「なんか彼女に会いに行った」

「じゃあ帰ろうやぁ。晃は彼女と帰るやろ」

「えぇ~、綾と帰るがかよ~」

「じゃあいいわ。ばいば~い」


あたしはそのまま秋田に背を向けて歩き出した。