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その時、突然携帯が鳴り出して、思わず持っていた下着を落としてしまった。
電話の主が分かったから。
この着信音は……
「海里」
『あ、美海か?』
「うん。どうかしたの?パーティーは終わった?」
『ああ。今から帰るから。お袋たち、もう来た?』
「うん。今日はうちの両親も呼んでパーティーするらしいの」
『へー。それはそれは』
その時、電話の後で女の人の声がした。
『海里ー誰と話してんのー?』
一瞬胸がドキッとした。
海里は今日、高校時代の友人の結婚式に呼ばれて都内のホテルに行っている。
だから、今の声もきっと当時の友人で、別に何も心配することはない。
そう分かっているのに、なんだか少し、胸騒ぎがする。
『オレの最愛の人。ミサキ、お前邪魔』
『えー奥さん?いいじゃん、今日くらい奥さん忘れて飲もうよー』
電話の向こうで繰り広げられる会話を聞いていると、なぜか涙がこぼれた。
『最愛の人』
そう言ってくれたのはすごく嬉しいのに、『ミサキ』と呼び捨てにしていた女の人の方が気になってたまらない。
もしかして昔、海里が付き合っていた女の人の1人?
きっと今日の結婚式には、海里の元恋人がたくさんいるはず。
本当はそれがイヤだった。
結婚式に行ってほしくなかった。
海里が今、何よりもあたしを大切にしてくれていることは分かっているのに、やっぱり不安は拭い去れなくて。
お酒も入れば、女の人だって悪ノリするかもしれない。
海里を信じているのに、そんな不安がいつまでも付き纏う。