最後にお義母さんは、あたしに真っ黒な紙袋を渡しながらこう言った。
「それ、おまじないよ」
「え?」
「可愛い女の子になれるおまじない」
それだけ言い残すと、ウインクをして里海たちを車に乗せた。
「バイバーイ」と手を降る娘を見送り、部屋に戻ってさっそく袋を開けてみると。
「えっ!?」
出てきたのは、一流ブランドの高級下着。
赤・白・黒の3つの下着。
どれも普段、あたしがつけているタイプのものとは違う。
これ……どういうこと?
唖然としていると、袋の中にカードが入っていることに気づいた。
美海ちゃんへ
海里の好みが分からなかったから、本人に聞いてみて?今日は誰にも邪魔されずに、刺激的な夜を過ごしてね。ふふ。
「……」
本当の家族になってみて分かった。
お義母さんは実は、とってもお茶目だということが。
ただの『海里の幼馴染』だった時にはこんな一面見えなかった。
普通は、大事な1人息子を嫁に盗られまいと、こういう時は邪魔をしたくなるものじゃないのかな。
だけど、お義母さんはいつもあたしの背中を押してくれる。
『大事な娘だから、幸せになってほしいの。大事な息子と』
そう言いながら。