「今日は里海と約束したから」

「約束?……あっ、里海が教えてくれなかったやつね?」

「はは。ちゃんと守ったのか、里海は」

「あの子はもう、ちゃんとそういう区別できる子になってるから」


海里がまた、さっきみたいに柔らかい笑顔を見せた。


「里海さ、オレに言ったんだ」

「なんて?」

「『里海と海音は邪魔しないから、ママをいっぱい甘えさせてあげて』って」

「え……」


瞬きすることも忘れた。

それが原因なのか、視界がすぐに涙で滲んだ。

里海が守りたかった約束は……それ?


「『ママはいつも頑張りすぎだから、パパがいっぱいママのワガママきいてあげて?』だってさ。ほんと、いい女に育ったもんだ」


抱きしめられた海里の腕も、少し震えていた。

きっと泣いてるんだと思う。


今日は何度泣かされただろう。

愛娘の成長に。

思いやりに。


「明日…いっぱい抱きしめてあげようね、里海たちのこと」

「そうだな」


真っ直ぐ素敵な女の子に成長し続けている娘。

あたしたちの自慢の娘。


いつかあたしたちの元を巣立っていくまで、2人で大切に見守っていきたい。


「その前に、今は美海を抱きしめたいんだけど?」

「えッ」

「約束も果たさないとな。どうしてほしい?」

「……い」

「ん?」





「朝までずっと、抱きしめてほしい」



☆ハッピー・バレンタイン☆