分かってるよ。
あたしの嬉しいは、男として、夫として。
里海の嬉しいは、男として、父親として。
こうして少しずつ、いろんなところで娘の成長に気づいていくんだね。
2人で一緒に。
「あーあ。まさか娘がライバルになるなんて」
「強敵だな?美海」
「ほんと、最強だよ」
きっと敵わない、里海には。
「あの子はあたしの自慢の娘だから」
「ああ。最高にイイ女だな」
海里のこんな柔らかい表情を引き出せるのは、きっと里海だけ。
あたしには絶対に見せない、そんな顔。
「そのうち海音もライバルかもな?」
「んー……複雑」
真剣に頭を抱えるあたしを、海里は突然抱き上げた。
「えッ!?」
「心配すんな、美海」
「何?」
「すぐに里海も海音も大人になるから」
「……そうだね。好きな人とか出来て、『パパダイスキ』から『けんクン大好き』に変わるかもね」
「誰だよ、けんクン」
「ん?この前幼稚園で見かけた里海と同い年のイケメン」
「なんだそれ。はぁー……複雑」
さっきのあたしと全く同じ顔の海里。
娘2人だから、いつかはあたしみたいに大好きな人を見つけて、お嫁にいっちゃうんだよね。
ちょっと海里、可哀想かな……。
「美海、次は男の子作ろう」
「え!?き、気が早いよ!!」
「娘の父親は幸せだけど……いつか手離す日が来るからな」