ドンッ
背中に衝撃が走る。
床に転がるバスケットボール。
「よぉ、フニャフニャスマイル野郎。こんなブス如きにデレデレとしやがって」
背後からの声。
振り向いて視界に入ったのは
「本田先輩・・・痛いよ?」
「ちょっと!かっちゃんにボール当てないでよ!」
青いゼッケンを着た、本田先輩だった。
「今日は三年対一年だ。俺様にかかりゃおめーさんはボッコボコだかんな」
ニヤッとイヤらしい笑顔だ。
全く・・俺を挑発するのが好きだね、先輩は。
「遊んで欲しいなら素直に言いなよ、本田先輩。みゅうの前でボッコボコされるわけにはいかないんで、覚悟しなよ先輩?」
「おうおう。随分と自信満々だな?なら・・・俺が勝ったら、一日ブスを俺に貸せよ?」
は?!
頭イカれたのかこの人・・・。
「みゅうを賭け事に巻き込む気は」
「かっちゃんが本田先輩に負けるわけないじゃん!!」
ない
そう続けるはずだった俺の言葉は行き場を失って、代わりにみゅうが叫んだ。
「ふん、言ったな?じゃ、そーゆーことで」
ご機嫌な顔でそう言った本田先輩は俺たちに背を向けて、準備運動をしに行った。
「みゅうのばーか」
「かっちゃん!?」
「自分のこと勝手に賭けないでよ。それとも先輩とデートしたかったの?」
ただの口約束だって、嫌なんだよ。
みゅうが本田先輩とデートする可能性を生むなんて。
「お、怒ってる?・・・でも、かっちゃんは勝ってくれるでしょ?」
「みゅうのせいで何が何でも負けられなくなったよ」
怒ってるっていうか、イジケてるんだ。
みゅうが簡単に俺以外に自分を差し出そうとするから。
でも俺を見上げるみゅうが困った顔をした子犬みたいだから、あんまり責めることも出来なくて。
ぐいっとみゅうを引っ張って、腕の中に閉じ込めた。
「俺が勝ったらみゅうのこと、ちょうだいね?」
耳元で言えば、みゅうの耳は真っ赤になって。
本当可愛いな。
さくっと勝って、おしおきしなくちゃだね。
俺のもんだってちゃんと自覚しろってさ。