「奏大くん、今日は大事な話があってきたんだ」
やってきたのは悠真先生と兄貴。
大方、予想はついてる・・・。
化学療法をはじめてから暫く立つのに回復の兆しはみられない。
病魔がどんどん俺の体を蝕んでいくのだけを感じるから。
そうなれば・・・方法は
「骨髄移植、ですか?」
「ああ、そうだ。まず俺が適合するか検査をしてもらう。兄弟間が一番可能性は高いようだからな」
やっぱり、骨髄移植だったか・・・。
兄貴とだって適合する確率は低い。
それにもしも・・・兄貴と型が適合したとして、兄貴にリスクがないとは言い切れないんだ。
「万が一、移植手術ができたとして・・・生存率はどのくらいなんですか?」
悠真先生の表情から笑みが消えて、真剣なまなざしになった。
兄貴を犠牲にする延命措置なら、いらない。
確証のない俺の未来のために・・・兄貴にリスクを背負わせたくなんてないんだよ。
「長期生存率でいえば30%~40%だね」
半分も、ないじゃないか。
もしも・・・手術が成功したとしても、ずっと健康で生きていける可能性は半数にも満たない。
いつ再発するのかも分からない。
そんな、俺の未来のために・・・兄貴にリスクを背負わせるなんて出来ないよ。
今までだって散々迷惑かけてきたんだ。
それなのに。
これ以上、兄貴に迷惑かけるなんて・・・ダメだ。
「俺は、骨髄移植はうけません」
「奏大何いってんだ」
「兄貴、気持ちは嬉しいけど・・・。これ以上俺を足手まといにさせないでよ」