オレと爆弾少女(仮)の間に着地したそいつは、間髪入れずに少女へと掌底を繰り出す

同時に手を包む燐光と共に、バチバチと火花が散る

――電気…か?

ところが、爆弾少女の反応も速い
とっさに、さっきよりも小規模な爆発を起こして、掌底の軌道をズラしていなす

刹那の攻防は、一向にオレの常識の外側だ

爆弾少女が後ろに跳んで距離をとる

「まったく、今日は退屈しないなぁ。で?アナタはどちらさん?」
爆弾少女は問う

掌底を放ち、乱れた舞っていた長髪が元に戻る

制服を着て
やはり、それはウチの学校の制服だった

オレを庇うように立つ後ろ姿
なぜか見覚えがある

それは――

「涼……なのか?」

「遅刻!」
そういって、チラッと振り返った横顔は幼なじみの涼のもの
気負った風でもなく
いつもの嗜め顔でオレを見下ろしてくる

「入学、3日で遅刻するって人として、どうなのよ?」

「うっせー、目覚ましが怠けてたんだよ。つーか、メールで起きるかよ!?」
ついつい反射で返事を返してしまったが
こんな状況で、日常会話振ってくるか?普通

「まったく……」
あからさまに頭を押さえて俯く涼

「遅刻なんかするから、こんなのに巻き込まれるのよ」


涼の向こう
爆弾少女は以前、楽しそうな笑みを浮かべている

「まぁ、わたしとしては楽しめれば、どっちでもいいんだけどさぁ」
少女の瞳に、さっきと同じ妖しげな色が灯る

ボンッ!!

少女が指を弾くだけで指先の空気が爆ぜる

「一応、名前くらい教えてくんないかな?後で聞くの面倒だから」

ボンッ!!


ボンッ!!

一定のリズムで起こる爆発は噴火前の火山を連想させる

「あなたはマナーを知らないんですか?名前を知りたいなら自分から名乗るのが常識!」

この期に及んで、涼の言葉だけが浮いて聞こえる

常識を説く普通の言葉は、この世界の前では異物……

その現実にオレは恐怖した