やべぇ…
コイツ、見逃す気ゼロだ

しかも、とっても面倒くさい――
いや、イタい感じに絡んできやがった

力?いま力っつたか?

なんなんだ?
この、学園バトルもののような展開は!

これも涼の罠か?
それともオレの日頃の行いが悪いってことか?
だったら謝るぜ!?土下座する勢いで!

正面に立つ少女は、視線が合うとニヤッと笑いかけてくる

なまじ外見が整っている分、そのギラついた笑顔とのアンバランスさが余計に怖い

……s~t……m~…

なんだ?

良く見ると少女の綺麗な唇がかすかに動いている

聞き取れないほどの音量で何かを呟いているようだ

やっぱり、ソッチ系かっ!?

オレは何かを受信中らしい少女が本気で怖くなった
逃げよう!

振り向いて走り出したところで
「…侵蝕範囲確定、隔離…」
少女のその言葉だけ聞きとれた

すでに来た道を戻っていたオレにはどうでもいいことだ

もう20メートルは離れただろうか?
少女は特に追ってこない

すると、いきなり何かにぶつかった

何かってなんだよ、って?

何かは¨何か¨だ!
目には見えない¨何か¨だ

¨何か¨に鼻を強打して、頭の芯にまで痛みが届く
視界まで一瞬チカチカした
もう、軽いパニックだ

鼻血がでていないのはせめてもの救いか

なんとか痛みに慣れて乱れた思考が落ち着いてくる

おもむろに目の前の空間に触れる
¨何か¨がある

熱くもなく、冷たくもない¨何か¨
プラスチックのようにツルツルで固い

なんだよこりゃあ!?
さっきまで無かったぞ!?こんなの!

「ははっ!無理だって。ここはわたしのテリトリーの中……逃げらんねーわよっ!」
一気に少女が距離を詰める

走るなんて生易しいもんじゃない
まるで、地面の上を滑るように跳んでくる

2回の跳躍で射程距離!

少女は体の勢いを殺すことなく、構えた拳を振り抜いてくる

一瞬、腕で受けようかとも考える

いや!
こんな異常事態の人外魔境だ
少女の拳がまともなはずがない

間一髪のところで体をそらしてかわす
受け身のことなど考えないほど全力で

直後に背後で爆発が起きる