〉わりぃ、いま起きた
〉これから急いで行くわ

送信ボタンを押して、急いで部屋着を脱ぐ

新しいワイシャツをもどかしいビニールから取り出しつつ、流れるような動きでパンをトースターへ

恐らく、第三者が見ていたら、今のオレはひとりで優雅に踊っているかのようであろう

ハンガーに掛かっている、まだ糊の効いたズボンを穿いて

慣れないネクタイを苦労して絞めたところで、パンが焼きあがる

ここまでの時間、正味3分
自分の中でも、なかなかの好タイムだ

もはや寝癖なんぞは見ないふりである

マーガリンを焼きあがったパンに適当に塗り、口にくわえる
食べるのと同時進行で身の回りのモノをテキパキ回収

走ることを考えて、使い古して、くたびれた方の革靴に足をっこむ

ガス栓――よし!
電気――よし!
水道――よし!

目配せだけのずさんな戸締まりだが、しないよりはましだろう

「行ってきます!」

いかなる時でもって、挨拶は大切に
これが、我が家の敷きたりなのである

いや~、習慣って素晴らしい!
ビバ!!習慣!

どうだ?
今までのオレの行動の中で、一番¨健全¨だろう?

バンッ!!とドアをやかましく閉めるところは、オレってことでひとつ勘弁だ

いや、焦ってるからだと弁解くらいはしておこう