「彼女の名前は水面といいます」
葛原は少し目を細めながら続ける

「解離性同一性障害……聞いたことありませんか?」

「……それって二重人格のことでしたっけ?」
オレの代わりに答えたのは涼だった

「ええ。厳密には少し違うんですけどね」
葛原の視線の先
新たに水面と呼ばれた少女はおずおずと気弱な視線をよこす

外見相応な真面目そうな生徒がそこにいた

「さて、軽い自己紹介も済みましたし、そろそろ本題にいきましょうか」
オレたちを見渡しながら、葛原はそういった

「まず私たちの持つ力について」
空気が少しずつ硬化していく

「この力は『IPIA』、擬似的物理干渉能力と呼ばれています」
少しの間を置いて

「実は詳しいことはよく解っていないんですよね」そう言って葛原は苦笑した

「ただ、この能力は隔離した特定のテリトリー内でないと最大限の力は使えません」
「テリトリー?」
「そうです。さっき火織が君を隔離していたのに気付きませんでしたか?」

そう言われて
さっき逃げようとした時、見えない壁にぶつかったのを思い出す

思い起こせば、あの場所は静かすぎた
まるで自分たち以外、誰もいないかのように