「火織とはもう自己紹介したんですよね?」

シェイクハンドで本当に腕ごとシェイクされそうだったけどな!

「彼女も悪気があったわけではないんですけどね」と、オレの心を読んだかのようなフォロー

いや、アレで悪気がないとかもっとダメだろ!?

「ご、ごめんなさい!」
唐突な謝罪

一瞬、誰が言ったかわからなかった
最初、女の声だったので涼かと思った

だが、話の流れとかみ合わないし、なによりその涼が声の主を見ていた

まさかの火織だった

下を向き、両手で自分のスカートをくしゃっと握りながら

なんだコイツは?
さっきまでの危険な空気とは対極のような

そう
内気な少女が精一杯の勇気で喋るような、そんな雰囲気

さっきまでの怪しく輝く眼光は嘘みたいだ

まるで別人じゃないか

そんな火織が言葉を続ける
「さっきは火織があなたたちを傷つけようとしてしまって……」

ん?なんか文章がおかしくないか?

コイツは自分の名前をまるで他人のように呼んでいる

「気付きましたか?」
そういって曲音という男は目を細めながら

「彼女は火織ではないんですよ」

「へー…って、はぁ!?」

「あれ?気づいたんじゃないんですね?」

確かに、さっきまでとは別人ていうのが一番しっくりくる回答だ

チラッと元爆弾少女を見ると、まだ俯いている

そこには何かに耐えるような気弱な女の子しかいなかった