「ははっ!そうこなくっちゃねー」
朱葉は不敵な笑みを絶やさない

気づけば、朱葉の手の中にも赤黒く輝く不吉な塊
二人の力が
恐らく、常人なら一瞬で致命傷を負うであろう一撃

ぶつかり合う――
…その瞬間―

「はい、そこまで」
場違いなまでに平坦な声が重なる


衝撃に身構えていたが、いつまで経ってもその瞬間がこない

二人の少女を見てみる

輝く閃光はある
しかし、決定的な放出を放てないでいる

もう一人の来訪者によって

バチバチ――
ギチギチ――…

「火織……あなたはバカですか?いや、バカでしたね」
影のように現れた男は、ため息混じりにそういった


二人の少女の手首を掴み、ピクリとも動かさない

やがて、少女たちの光が薄れる

「チッ…!」
バシッと男の手を払う

「テメーはいっつも邪魔すんのな」
少女が睨む

「あなたが常識的な手段を使ううちは邪魔しませんよ」
相変わらず平坦に

「あのー、放して貰えます?」
涼が訴える

「これはすみません。怪我はありませんか?そっちの君も」
オレの方にも声をかけてくる

事態の急な変化についていけてないが
どうやら、オレらは助かったらしい

朱葉はと言うと
決まりの悪そうにそっぽを向いている

今更、気付いたが周囲の喧騒が聞こえる
朱葉の言っていた¨テリトリー¨の中にはオレたち意外に何もいなかったのかもしれない

「さて。このバカが順序をかなりすっ飛ばしてしまったので、聞きたいこともあるでしょう」
朱葉を指差しながら言う

「ここじゃ目立ちますね。取りあえず学校に行きましょうか」

男は柔和な笑みで、そう言った