俺たちは佐々木美保の事務所から
少し離れた喫茶店に入った。
「中の様子、全然分かんないっすね。」
「ああ。」
(本当は事務所周りをうろつきたいんだけど…あの車じゃ無理だよな。)
「ところで樹さん。」
「ん?」
「“黒の契約者”って
そんなに強いんすっか?」
「強い…ってか面倒くさい…かな。」
「面倒くさい?」
「アイツらはいろんな力を持ってるから
一々戦い方を変えないといけないんだ。」
「“力”…ですか?」
「そっ、例えば…
体から火がだせたり、水がだせたり…
爪が異常なくらい鋭かったり…
今、ウチが確認できているだけで
12種類もの“力”がある。」
「そんなに!!?」
「ああ。
しかも、日に日に奴等は
“力”を強化させてきている。」
「そんなぁ…」
「しかも、見た目は普通の人間だから
すごく分かりにくいんだ。」
「え~…
そんなのどうしたらいいんすか?」
「奴等は薬のせいで
身体の一部を失っているはずなんだ。」
「例えば?」
「腕とか足とか…」
「な~んだ!!
それなら見つけやすいじゃないっすか!!」
「じゃぁ、肺とかだったらどーだ?」
「えっ?臓器っすか?」
「そう、中には味覚や視覚などを
失った奴等もいるらしい。」
「それって、身体の一部じゃないじゃないっすかぁ~」
「まぁな。………!!」
俺は後ろから強い気配を感じた。
そして勢いよく
喫茶店の入口の方を見た。
しかし、そこには誰もいなかった。
「ど、どうしたんっすか!!?」
「いや…何でもない。」
「?」
確かに気配がした。
微かだったが、絶対何者かがいた。
黒の契約者か…
闇ノ使者の者か…
どっちにせよ
此所に長居は禁物だな。
「淳、帰ろう。」
「えっ!!?
まだ、佐々木美保を確認してないっすよ」
「今日はもういい。
多分、佐々木美保は現れないから…」
「現れないって…」
「行くぞ。」
「あっ、はい。」
そう、佐々木美保は現れない。
そして、ジンがくれた
この佐々木美保の一週間の予定も
きっと…違ってくるだろう。