『そうなんですか。ベンチの下だったんで、気付かれにくかったんじゃないですか?』
敬語で返して来た相手は、
女のようだ。
「ベンチって学校の中庭の?」
チャリン。
2枚目の10円が落ちる。
『そうですよ』
「あーそこか!昨日サボって寝てて落としたんだな。じゃあ君、坂上校の生徒?」
『はい』
「そっか!んとにありがと」
『いえ。あの…どうしたらいいです?』
「悪ぃ悪ぃ!あー場所も分かったし、そのままベンチの下に置いといて。次は見つかるとやべーし」
『分かりました。じゃあ、ここに置いと」チャリン…ブツップーッ…プーッ…』
3枚目の10円が落ちる
音と一緒に、
女の声は途切れた。

あーっ
切れた。
まあ居場所も分かったし、
置いといてもらうように
言ったし、大丈夫だよな。
長居した公衆ボックスから
出て、学校に向かって
歩き出す。


これが、
俺たちの出会い。
偶然?
必然?
それとも…運命?
この時の俺たちは
まだ、
ただの偶然にしか
思っていなかった―