と言いかけて私は言うのをやめた。

なんだか、申し訳ない気持ちと、この男のことを知りたいと思ったからだ。

いまどき、こんな珍しい人間は数えるほどしかいない。

少なくとも、うちの学校には絶対にいない。

みんな、地位やお金が目当てだ

別に惹かれたわけじゃない。ただ、この男の行動が珍しかっただけだ。

というか、私が人間に惹かれるはずがない。

私は先生に挨拶をして、その場を後にした。

家に帰ると、珍しく父親が帰って来ていた。

父親が帰って来ると、家が騒がしくなる。

それも当然だ。なにせ、旦那様のお帰りになるからだ。

私は、会いたくないのですぐに部屋に入った。