学校の門を出る前に、私は声をかけられた。

担任の宮田だった。

私が素通りして行こうとすると、また声をかけた。

「待て、橘。お前なんで傘を持ってないんだ?」

私はさも面倒だという態度で答えた。

「忘れました。」

宮田はめずらしいとでもいうように、こう言った。

「お前、忘れ物なんてしなさそうなのにな」

コイツ…バカじゃないの?今日は朝から雨が降っていたのに、忘れてしまった、なんていう「嘘」を信じるなんて、バカじゃないとありえない。

と、私は思った。

宮田はさらに続けた。

「少し待ってろ。」

そういって、どこかに行ってしまった。