話は変わるけど、どうやらあたしは華のモテ期ってやつを迎えたらしく。


「おれ稲美さんの事好きなんだよね。付き合ってくれないかな?」


最近何人かの男子から告白をされた。
でも、どの人たちもあたし全然知らないし。
あっちだってあたしの事知らないだろうし。


返事はどれも一緒だった。


「あー……。悪いけど、そういう気ないんで」


だって、名前も知らないんだよ?
どんな人かも知らないし。
接点もないし。
あっちはあたしを知ってても、あたしは知らない。
しかも相手が知ってるあたしなんて高が知れてる。
好きって思った事もない知らない人と付き合うような軽い女じゃないし。
モテ期は来ても、あたし今まで彼氏できた事1回もない。


でも……。


吉馬は知ってる。
吉馬の好きなものとか、嫌いなもの。
癖とか全部……。
知ってる。
あたしを知ってくれている。


「あたしも……」


俯いていたあたしは吉馬へと視線を上げて口を開いた。


何だか今までとは違う。
心臓がドキドキいってる。


「あたしも……吉馬が好き、だと思う」


少し体温が上がった気がした。
顔が熱くなって、“好き”って言葉を口にした途端。
また心臓がドキドキした。


すると吉馬はあたしをキョトンと見つめると、しばらくして優しく微笑んだ。


今まで知らなかったこの胸の高鳴り。
ドキドキするのとか。
全部……これは吉馬が好き。だからなんだよね。