あたしは大きく頷いた。
すると男子は寂しそうな顔をしてフッと笑った。


「何だぁ。落し物で神様の贈り物だって喜んでたのに。持ち主見つかっちゃったか」


そう言ってはぁ……っと溜め息をついた。
その言葉を聞いてあたしは眉をピクッと動かした。


ん?
何か嫌な予感……。


「ちょっと!あたしのなんだから返してよ」


あたしは慌ててそう言って男子を見上げた。
すると男子はニッと笑った。


「返すよ。でもさ……」


ウォークマンを持ってあたしの顔の前で止めた。


「俺の好きな曲ばっかだからさ。しばらく貸しといてくんない?」


そう言ってウインクしてきた。


え……。


「ぁ……返してくれるならいいけど」


返してくれるんだったら別にいいよね?
そう思ったからあたしは頷いた。
すると男子はフッと笑ってあたしを見下ろした。


「やった。サンキュー」


そう。
このウォークマン事件がきっかけで、あたしと吉馬は知り合った。
それからあたし達は、音楽の好みとか何かと話が合って。
仲良くなるのにそう時間はかからなかった。


ヒューッと風があたし達の間を吹き抜けた。
すると吉馬は髪をクシャッとしながらあたしを見つめた。


「希が俺をそういう目で見れないならそれでいいし。もし少しでも好きだって思ってくれるなら付き合ってほしい。でも無理なら、このまま友達でいよ?」


吉馬……。